「結局、いくら稼いだらいいの?」という目線から、いくつかのケースごとにわけて説明します。
より細かく知りたい方は、折りたたまれている詳細をご覧ください。
とりあえず全体感だけ知りたい方は、読み飛ばしてください。
年収の壁とは?
「税金や社会保険を支払うかどうかが決まる金額」を年収の壁と呼んでいます。
令和7年度税制改正により、2025年12月の所得税の年末調整、2026年6月~の住民税支払い分から「年収の壁」の金額が変わります。
税金の話
- 110万円の壁(旧100万円の壁):住民税の支払いが生じる
- 160万円の壁(旧103万円の壁):所得税の支払いが生じる
所得税に関する控除の見直しにより、基礎控除額、給与所得控除の最低保証額が増加した影響で、所得税の支払いが生じる金額が103万円から160万円になりました。
一方、住民税に関して、基礎控除額は据え置き、給与所得控除の扱いは所得税と同様となっています。
出所(PDF):国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」
社会保険の話
- 106万の壁:(従業員数51人以上の会社に勤めている場合)健康保険・厚生年金保険の支払いが生じる
- 130万の壁:上記対象者以外でも、国民健康保険・国民年金保険の支払いが生じる
いくら稼げばいい?
※健康保険料率は5%として試算しています。
配偶者は106万円以下か125万円以上
以下の要件を満たし、配偶者の年収が107万円から124万円の間に収まる場合、手取りが106万円を下回ります。
そのため、106万円に抑えたほうが結果として得られる金額は多くなります。
- 週20時間以上の労働(所定労働時間)
- 月8.8万円以上の賃金
- 雇用期間(見込み)が2ヶ月を超える
- 学生でない
- 従業員数51人以上の会社で働く
125万円以上の年収がある場合、年収が増えるほど社会保険料や税金の負担は多くなりますが、手取りが減少することはありません。
従業員数51人以上の会社に勤めている人以外
年収が130万円を上回る場合、国民健康保険、国民年金保険を支払う必要があります。
国民健康保険は自治体ごとに支払金額に差があり、一概には計算できません。
※ここでいう「従業員数」とは、フルタイムで働く従業員+週あたりの所定労働時間および月あたりの所定労働日数がフルタイムの75%以上の従業員となります。正社員でなくても、この条件を満たす場合は従業員数に含まれます。
学生は手取りが一時減少することはない
年収の壁を超えると一時的に手取りが減少するのは、主に社会保険料の支払いが生じるためです。
原則として、学生は社会保険の加入対象者とならないため、160万円を超えるとその年の所得税の支払いは生じますが、手取りは増え続けます。
ただし、週あたりの所定労働時間および月あたりの所定労働日数がフルタイムの75%以上となる場合は、社会保険料の被保険者となります。
ちなみに、学生の給与所得がメインである(給与以外の所得が10万円に収まる)場合は、申請すると「勤労学生控除」が利用できます。
世帯年収でみると?
扶養者の年収により、扶養を外れたときに生じる税金の支払額は変わります。
配偶者に年収がある場合
配偶者控除、配偶者特別控除については、基礎控除、給与所得控除の最低保障額の引き上げにより、基準額が改正されました。
以前は、103万円までが控除を満額受けられる(=税金の支払額が最も抑えられる)範囲でしたが、この基準額が123万円に上昇しました。
学生を扶養する場合
2025年の年末調整から、扶養者(親)が19歳以上23歳未満の親族(子ども)を扶養している場合、特定親族特別控除が適用されるようになりました。
これにより、子どもの年収が150万円までは控除を満額受けられます。
また、150万円~188万円の範囲に収まる場合は、段階的に控除額(特定親族特別控除額)が減少するようになりました。
※以前は、子どもの年収が103万円を超えるか超えないかで、控除があるかないかの2択でした。
まとめ
稼ぐ人単体でみると、以下のようになります。
- 配偶者:106万円に抑える、または125万円以上稼ぐ
- 学生:(社会保険の対象にならない範囲で)稼げばよい
また、世帯年収としてみると、以下のようになります。
- 配偶者:123万円に押さえれば、扶養者が受けられる控除は最大になる
- 学生:150万円に抑えれば、扶養者が受けられる控除は最大になる
なお、年収が110万円を超えると、翌年は住民税の支払いが別途生じることに注意してください。
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