【企業研究】ベイカレントの光と影

企業研究
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規模、売上ともに拡大を続けているベイカレント・コンサルティング。2024年には持株会社体制に移行し、日経平均株価にも採用された一方、SNSで度々炎上するなど何かと話題になっています。

ベイカレントの光

驚きの成長率

ベイカレントに注目が集まる理由の一つは、その成長率の高さにあります。

当時の東証マザーズ上場後、売上高、従業員数(持株体制移行後は連結売上高、連結従業員数)は以下のように推移しています。

※売上高は各年2月期、従業員数は各年4月時点。

上場から10年経っていませんが、売上高は8倍近く、従業員数は5倍以上に拡大しています。どちらの指標も主要KPIとして設定されており、FY2026においても前年比20%増を維持すると公表されています。

東京ドームでの看板広告出稿、ゴルフ大会のスポンサーなど、さらなる知名度拡大に向けた施策もみられます。

時価総額は303億6800円(上場時初値ベース)から1兆1606億1200万円(2025年4月25日終値ベース)となり、市場の期待も非常に高いということがわかります。

上流から下流までカバーする体制

株式会社ベイカレント・コンサルティングは持株会社(株式会社ベイカレント)に移行し、子会社として新たに株式会社ベイカレント・コンサルティングと株式会社ベイカレント・テクノロジーを設立しました。

ベイカレントはIT案件も扱っていますが、企画や要件定義などの上流工程だけでなく、開発やテストなどの下流工程まで一貫して支援する体制を強化するためにテクノロジー部門を分社独立させたと考えられます。

また、ベイカレント・コンサルティング自体も上流工程だけでなく下流工程まで支援できる体制を整えているようです。クライアントの需要に合わせて委託契約と派遣契約を使い分け、常駐先に委託先あるいは派遣社員として人員を提供することで、強みを発揮しています。

ワンプール制

未経験でコンサルに入ると、どの事業領域が自分の専門性に合致するか見極めなければなりません。ワンプール制では、特定の事業領域以外にも関わる機会があるため、キャリアを積み上げつつ自分の方向性を考えられます。

また、ベイカレントは営業部隊(プロデュース部)が案件を獲得し、コンサルタントは面談を経て案件にアサインされるという仕組みを設けています。営業の面から見ると、ワンプール制は優れた構造です。提案内容に応じて必要な人材をアサインできるため、クライアントの要望に合わせてプロジェクトチームを柔軟に編成できると考えられます。

あまりにも有名すぎる受付

ベイカレントは受付嬢が美人とよく言われています。受付は芸能事務所のセントフォースから派遣されているということもあり、よく話題になるのでしょう。

ただし、受付とやり取りがあるのは来訪者のため、入社してもほぼ関わりはありません。また、トラブルを防ぐため、社内規定により交流を禁止されているようです。

ベイカレントの影

ワンプール制

ワンプール制は光として既に挙げていますが、実はキャリアの面から見ると影にもなる要素です。

通常のコンサルは専門性ごとにチームなどを構成していますが、ワンプール制の場合はプロジェクト単位で人員を管理しています。前者の場合は、今後ともに仕事をする仲間としての意識がありますが、後者の場合はそうとは限りません。

極論、スキル不足の人員がアサインされても入れ替えればよいため、若手層を育てるという動機が生じにくい原因になり得ます。一人で吸収して成長していく人にとってはよいですが、指導環境を求める人にとっては満足できない可能性があります。

また、自身の専門性を見極めるのに最適だと表現されることがありますが、コンサル他社でも新卒入社直後には配属されず見極めの期間が設けられているため、ワンプールである必要はありません。

組織の急拡大による弊害

短期間に非常に多くの人員が流入したため、組織の風土・文化はあまり強くなく、帰属意識も高くないという意見が聞かれます。成長を継続していくには、企業理念のもとに組織が一丸となって事業に取り組む必要があります。そうでなければ、成長の方向性が人ごとにぶれてしまい、内部分裂する可能性があると考えられるためです。

また、人員に対して案件が不足しているという声も聞かれ、いわゆるアベイラブルが増加しているといわれています。アベイラブル増加を防ぐため、アサインまでの期間に他の業務(内勤)を担当するという事例もあるようです。

FY2025通期決算説明会によると、平均稼働率は80%台前半とされています。また、案件が獲得できる時期にはばらつきがあるため、短期的な稼働率の低下は問題にならないとしています。

発信される情報から感じ取れる懸念

以前、ITとデジタルの違いを整理した投稿がSNSで炎上していました。

さまざまな意見はありますが、整理軸はMECEではなく粒度感にもばらつきがあり、各軸の内容にも疑問が残ります。そもそもITとデジタルを比較した意図もわかりません。これは会社アカウントから投稿されており、会社のイメージにも影響することは容易に想像できます。

また、他のSNS上でも社員が不特定多数に対してリファラルを呼びかけていたことがあり、リファラル報酬の面で双方にメリットがあると投稿していたため、他の利用者から疑問の声が上がっていました。投稿者曰く、同社の広報担当者に問い合わせ、承諾を得て投稿したということでしたが…。

上記のような投稿がなされていることを見ると、レビュー能力やリスク管理体制には懸念があります。

最後に

営業部隊とコンサル部隊を分け、営業を軸にコンサルを展開する手法は

国内発の総合コンサルとして最大手となり、今後の動向が注目されます。

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